Secbo Secboは、故人の尊厳とプライバシーを守り、伝えたい情報のみを遺すことを可能にしたクラウドサービスです。

 2018.12.03「終活弁護士」伊勢田さんに体当たりインタビュー!(最終回)【あぁ〜ナットク!!】

前回に引き続き、
デジタル終活弁護士である伊勢田さんへのインタビューです。
デジタル終活のやり方も佳境に入り、色んなお話を伺います。最終回ですよ!

■見られたくないデータを隠したい!!

   
 デジタル終活って「ちゃんとした人間関係が必要」という事は分かりました。
信頼できるような、人間関係を築いた上で、って事ですが、
じゃあパソコンの中の見られたくないデータとか、どう管理したらいいんですかね?
何かコツとかありますか?
  
これはよく使われている手なんですけれど…
   
 はいはい。
  
フォルダーの階層構造を利用します。
   
 ふぉ、るだぁ…の!?
かいそうぅ…。(耳から煙が出てくる)
   
 いつもの事なので、どうぞ気にせず続けて下さい。
  
は、はい。
パソコン内の「マイドキュメント」など、よく利用するドキュメントの中に、<家族が興味なさそうな>フォルダの名前をつけるという事です。
例えば、「英語」とか「囲碁」という名前のフォルダをクリックすると、「プロ棋士の名前」が書かれてあるフォルダがたくさん出てくる。その中のひとつを開けると、「1990年」ですとか「年月日」みたいなフォルダがいっぱいあって、それをクリックすると「対戦相手」のフォルダがあって、さらにクリックすると「棋譜」が入ってて、対局をどう指したかっていう棋譜ですね。たくさんあるフォルダのうち、たった1つのフォルダに見られたら困るコンテンツが入っているっていう。(笑)
   
 壮大!(笑)
   
 ややこしい!(^o^)
  
そうすると正面突破しにくいですね。
古典的な例として囲碁を出しましたが、もちろん家族の興味がないものに置き換えて下さい。
興味のないものをクリックし続けたら、通常は…
   
 「もういいよ!」ってなっちゃいますもんね。
それはいい手ですね!
  
なんですけれども!
ただひとつ弱点がありまして、パソコンのとある機能に対しては非常に脆弱なんですよね。
   
何の機能ですか?
  
「検索」という機能です。
拡張子で検索されると一発でバレちゃうんです。
   
 ははは。
ダメじゃないですか!
  
という事で、このようにご案内してます。

隠したいものがあるという前提です。
そこからさらに絶対に隠すもの「ある場合」「ない場合」で考えましょう、と。
   
 ちょ、ちょっと整理させてください…
「絶対隠す!」ってものが、
「ある」場合と「ない」場合。
…ですね?
あるとないでは、何か対応とかが違うんですか?
  
はい。まずは(絶対に隠すものが)「ない」ケースです。
「絶対に隠す」ものがないという場合は、「出来れば、隠す」というくらいのものは、
先程の例のようにフォルダの階層を変えたりして対応しましょう。
   
 検索で見つかっても、「出来れば、隠す」ってレベルですもんね。
そんなにダメージはないかな?
  
この場合は、基本的にはパソコンのパスワードをお伝えして、残したいものは残しましょうというスタンスです。
パソコンの中を開けて入ってもらいましょうと。
パソコンの中って自分にとっては秘密の花園であっても、他人にとってはジャングルなんです。
   
 おお!今回の名言。その通りだ!
スマホとかも、ホーム画面って個人でバラバラですもんね。
「自分にとっては秘密の花園であっても、他人にとってはジャングル!」
  
そうですね。
他の人にとっては、持ち主がどういう風にフォルダ整理しているかなんて分からないので、そこはしっかりと、どこに何が入っているかを示して、ある意味ジャングルに花道と言うか、道を舗装してあげて、「こういう風に行ってください」ってちゃんと誘導してあげる必要があります。
そして「必要なものを取り出したら、ディスクを破壊してください」と書いてくださいね。と、ご案内しているという訳です。
   
おー。そこで前回言ってた、人間関係が必要!
  
その通りです。
一方で、今度は(絶対に隠すものが)「ある」という方ですね。

絶対にパソコン・スマホにアクセスさせちゃいけない
一方で残したいもの、これは<家族の必要とするもの>と考えるといいんですけれども、それについては外付けハードディスクや、信頼できる第三者を利用して、「残したいもの」が確実に残せる人に残すようにしましょうね。という事です。
   
 この場合は、いっそのこと、残すものを別に分けておくってことですかね?
パソコン・スマホにはアクセスさせちゃいけないから?
  
そうですね。
「パスワードなどのロックを掛けておけば大丈夫だろう」という声もあります。
   
 ロックしとけば安心ですよね?違うんですか?
  
実は、パソコンのロックなどは業者等に依頼すれば、意外にも簡単に開けられてしまうんですよ。
   
 !!?
そうなんですか!?
  
色んなケースがあるので、一概には言えないのですが、単純にパスワードロックをしているから安心という訳ではないんですね。
だから、そういう事も想定して、残すものを別に分けておきましょう、という事です。
   
 なるほど〜
管理の仕方も色んなパターンがあるんですね。
というか、世の中には知らなくていい事ってあるんですね〜。(´・ω・`)
  
なので、「こうして欲しい」「どうして欲しい」ということはちゃんと伝えます
必要な情報については「ここは見て欲しい」「ここは必要だ」って言った上で、その他については「それ以上は見ないでくれ」と伝えておきましょう。
それでも見ちゃったら、ある意味自己責任だと思うんですけれど。
何も伝えないままだと、「パソコンの中をとりあえず見てみよう」という状況になるのは当然だと思うんですよね。
   
 今どき写真なんて、スマホやパソコンにしか入ってないですもんね。
見るのは当然か。
  
もらい事故みたいな形で、<知らなくてもいい真実>を知ることになってしまうと、
それは非常に悲しい事です。
   
 何だかアレですね。とても他人事じゃないなって思いました。
見られたくない事、知られたくない事って、大なり小なり誰しもあると思うんで、
自分の居ない世界でそんな事になってると思うと、ゾッとする話ですよね。

■「普通の終活」と「デジタル終活」の違い

   
 結局ルールを作っても、ちゃんと実行してくれる信頼関係を日頃から築いておかないとダメですね。
今回のお話は、<自分が死んじゃった後>のことを想定して作業しないといけないじゃないですか。
死んだ後の事を考えるって、気が滅入りそうですね。
エンディングノートしかり、気が滅入る事をあまり考えたくないって感じる人も少なくないと思うのですが。
  
そうですね。そこがデジタル終活の一番大きなポイントだと思っています。
「普通の終活」と「デジタル終活」の違いって、ちょっと視点を変えているところなんです。
普通の終活のエンディングノートって、葬儀をどうする、墓をどうするという内容があったりします。
他にも終末医療をどうするなんてあったりしますが、これはなかなか非日常的なことですよね。
   
 そうですね。
  
終活ですので、当然自分の死も意識するんですけれども、
死の意識+非日常なので、なかなか手が動かないことが多いようです。
   
 重いですよね。
  
それに対して、デジタル終活って死は考えるんですけれども、日常的なものについても考えます
例えば、スマホなんて毎日触ってますし、SNSに毎日アクセスしている中で、<毎日やっている延長線上で、何かあった時のため>というように、日常的なものを対象とするので、少しハードルが低くなるのかなと考えてます。
   
 デジタルの方は、なんだかんだで日常的に触れるものですもんね。
  
その日常的という点と、あとはコレが一番大きいと思っているんですけれども、
普通の終活って結局自分は困らないんですよ。
正直、死んだら自分はこの世界にいないので、葬儀どうする墓どうするなんて「(残されたお前たちが)勝手に決めてくれ」と言われてしまったら、ぐうの音も出ないと言うか、「そうですか」みたいな感じになってしまって全く先に進まなくなってしまうんですね。
一方で、デジタル終活って、「恥」の要素にアプローチできるんですね。
「これは見られたくない」「これは見られたら死んでも死にきれない」とかとかいう意味で、「恥」にアプローチができるので、「自分は関係ない」「自分は困らない」という状況が、「自分も関係ある」「自分も困る」という風に変化します。
自分に対するアプローチ、恥に対するアプローチができるので、動機として取り組み易いかなと思っています。
   
 確かにそう言われると、とてもナットクです!
前向きというか、積極的なイメージがありますね。後ろ向きな感じではなく。

■終活セミナーに来る人達ってどんな人?

   
 伊勢田さんが開催されている終活セミナーに来る人達って、どういう年代の人が多いんですか?
年代的に上の方が多いんですか?
  
若い人が多いです。
   
 え?若い人が多いんですか!?
  
と言いますのも、終活セミナーって言うと60代70代みたいなイメージだと思うんですけれども。
   
 そうですね。終活っていう言葉からそう思ってました。
  
60代70代は、そんなに来ないです。
集客の問題もありますが、パソコンスマホを普段から使いこなしている人がそんなに多くないから。
   
 そうなんですね。(笑)
デジタルってなると、随分ターゲットが違うんですね。
確かにお年寄りでデジタルを使いこなしている人ってあんまりいないですもんね。
都内はスマホ触っている人、多少見かけますけど、地方になればなるほどいないですよね〜。
  
あと普通の終活って、天寿を全うしてっていうイメージだと思うんですけれども、
デジタル終活の場合は、天寿を全うしてっていうよりは、突然何かあった時のためというイメージでやっています。
ですから、30代40代だと天寿を全うってなると「あと4〜50年あるじゃん」って、終活とあまり関係ないかなと思われちゃうんですが、いやいや「明日絶対生きてる可能性って100%じゃない」ですよね?
これは皆平等ですけれども、明日何が起こるかわからない。
災害だってそうですけれども、交通事故だっておこるかもしれないっていう中で、もちろん可能性としては0.00…%かもしれないですけれど、その0.00…何%が起きた時に、自分が見られたくないコレクションがあったりした時に、そのコレクションをいかに守るか、自分の尊厳を守るかっていうところにアプローチできます
もちろん「いやそんなんどうでもいいわ」っていう人もいますけれど、「いやそれはやっぱりちょっと嫌だな」っていう人向けに、どうですかっていう形でご案内します。
   
 何となくですけど、
誰にでもそういう可能性はあるという事で、保険みたいな印象ですね。
  
そうですね、まさにそうです。
何かあった時のためという意味で、特に、パートナーが個人事業主であったり、経営者であったりとかは、より注意した方がいいと思いますね。
パートナーが亡くなった時にどこに連絡したらいいのかとか、仕事のアポとか毎日ある訳で、そのアポをちゃんと調整しないといけないという事も起こりうる。
その一方で、会社を経営されているケースだったら、亡くなった時の対応次第で会社の信用が変わってくるんです。
   
 信用が変わるんですか?
  
社葬をどうするかとかなどの訃報の連絡が、取引先に来なかったという事になると、随分後になって「なんで連絡がこないんだ」っていうトラブルになってしまう。という可能性もあります。
   
 それは困る。
  
残されたパートナー(特に奥様)としては普段からビジネスに関わっているという訳ではないかもしれないですが、緊急自体にはちゃんと対応しないといけないという。
   
 やっぱり主婦の立場としては、そういう事も必要ですよね。
ちゃんとやっとかなきゃですね。
  
逆にご主人が対応してくれないんであれば、「あんたの遺産を使って全部見るわよ」と。
「データをことごとく開けるわよ?だからやりなさい!」とケツを叩く意味で、ご主人が対応していない人は奥さんの方から言ってあげることは必要かなと思います。
「あなたが死んだらコレ全部私のものよ」と。「パスワードなんか簡単に開けられるわよ」「中全部見るわよ?それが嫌ならちゃんと対策しなさい!」と。
   
 主婦としては、ご主人のケツを叩く!っと…_φ(・_・(メモメモ)
  
奥様からすると、30代40代でご主人に何かあった時に、やっぱり通帳はどうだとか金銭的なところで、現実的に気になるじゃないですか。
でもなかなか教えてくれない。人間関係難しいところがあるかと思うんですけれども、逆にデジタル終活をきっかけに通帳の所在を聞き出せる可能性はあるわけですね。
だって対策しないとパソコン見られちゃう訳ですから。
   
 何だかそれが一番効きそうですよね。
目が泳いだりして。(笑)
  
やりますよね。色々かき集めて。(笑)
   
 これは主婦的な観点からも、良い事聞けました!(笑)
  
より管理を強めるという意味では、ご主人に「何かあった時にはちゃんと対応したいから、終活ノートを書いてくれ」と。
普通のエンディングノートとかだと難しいと思うんですけど、デジタル終活だったらハードルは低いと思います。
例えばFacebook等のSNSのアカウントとかだと、亡くなった方のアカウントがまだ残ってて、その亡くなった方の誕生日に新規でメッセージが残る。それを亡くなったことを知っている方、例えばご友人とかが、その書き込みを見ると悲しい思いをされる。ということが結構多発しているんですよね。
   
 確かに、SNSは誕生日のお知らせとか来ますもんね。
  
それに対して、亡くなったことを知らないご友人たちが「おめでとう」ってメッセージを残して、さらに悲しい思いをするという事も考えられます。
そういう現実もある中で、奥様がそこら辺のケアも全部やるから必要だからと、そんなデジタルの話をしていたらいつの間にかお金の話になって、「あんた通帳どこにあるの?」「隠し口座なんかあるんでしょ?」とか、なし崩し的に全部ヒアリングして、何かあっても大丈夫!という、ひとつの取っ掛かりにもなると思うんですよ。
   
今まで聞けなかった事も聞けちゃうという。素晴らしい取り組みですね!
そういう風に言えば、エンディングノートを描いてもらいやすいし、なんかいざ事故とか災害とか色々あるから、いつ死んでもおかしくはないしってことは誰でも分かりますしね。

   
 当初に抱いていた「終活」というワードとは、随分印象が違いました

■デジタル終活の今後

   
 伊勢田さんは、この活動をずっと続けていくような感じなんですかね?
  
そうですね、基本的には。
   
 伊勢田さんの今後の活動を教えていただけますか?
  
デジタル終活を普及していくってところで申し上げますと、セミナーもそうですけど、今日もメディアのお問い合わせが来ましたけれども、そのような場でちゃんとした情報発信をしていきます。
私の最終目標というか、最初にお話ししましたけれども、私は「相続で苦しめられる人をゼロに」というミッションを掲げているので、色々と苦しむ要素がある中で、少なくともデジタル関係で苦しむ人がいなくなるようにしていきたいです。今後はデジタル終活って(今のリアル終活世代はあまり必要がないかもしれないんですけれども)、ポスト終活世代は完全に必要な分野になってくるので、そこをちゃんとケアできるようにしましょうね。という情報発信を引き続きしていくという形ですかね。
   
 単純なターゲットっていうか対象者の年齢層は、終活世代よりもデジタル終活世代の方が…
  
若い。そして幅広い
   
 デジタル遺品をテーマにしたドラマもありましたしね。
そういう意味でも メディアの問い合わせが来てましたか?
  
そうかもしれないですね。
注目があると思うので、しっかりと情報発信していかないと変に誤解されても困るので。
   
 メディアで知って、デジタル終活に今気づき始めた人に対して、
まずはどうしたらいいとかありますか?何からはじめればいいとか。
  
まずは最低限パスワードを伝えておく
あとはパスワードを伝えて、中に入られて見られたくないものがあるんだったら、必要なものを指定して、これ以外は見ないようにしてくださいね、と書くとか。
どちらにしろ、まずはパスワードですね。特にiPhoneはパスワードが分からないことで中に入れず困る方が非常に多いです。

   
 遺された方は、それでとても苦労すると。
  
そうです。たった4桁、たった6桁のパスワードがわからないだけで、必要な方に連絡が取れないという事はいくらでもあり得ますので。
   
 時間もお金も費やして、心もどんどんすり減るって感じなんですかね。
なんだかかわいそう。
  
なので、しっかりとそこはケアしましょうね。という事ですかね。
   
 分かりました。
そこから始めましょうということですかね。

   
 ちゃんとした人間関係を構築しないといけないというのは 結構ハッとしたって言うか、勉強になりました。
今をどうやって生きるかが大事みたいな感想になりました。
本日はありがとうございました。
  
ありがとうございました。
page top