
前回に引き続き、
デジタル終活弁護士である伊勢田さんへのインタビューです。
デジタル終活に至ったきっかけや、デジタル終活を始める方法なども伺います!
■デジタル終活をやろうと思ったきっかけ
伊勢田さんは<日本デジタル終活協会の代表理事>という事だそうですけど、
デジタル終活協会って普段はどういった事をされてるんですか?
そうですね。デジタル終活セミナーを主催したり、講師として呼ばれたり。メディアからの取材を受けることもあります。
素人考えでアレなんですが、
弁護士さんだったら、相続問題だけで仕事に困らないと思ったりするんですよ。
だから、なぜデジタル終活についての活動をやろうと思ったのかちょっと普通に気になっちゃって。
伊勢田さんは、元々は普通の弁護士さんなんですよね。
弁護士だけれども、なんかデジタル。
私だけかもしれないですが、弁護士さんにデジタルなイメージはあまりないんです。
弁護士っていうと、揉め事(紛争)を解決するっていうイメージが強いと思うんですよね。もちろん、紛争を解決するというケースは多いのですが、弁護士になって、事件に接するたびに、「誰も好き好んで揉めているわけではない」ということを痛感します。
なので、そもそも紛争に巻き込まれないようにする、紛争予防・紛争回避をできないかと思うようになったんです。特に、相続問題については、日本人であれば誰もが経験する可能性が高い領域になります。
人はいずれ必ず亡くなります。ただ、自分がいつか亡くなることを見越して対応しておけば、揉めなくて済む可能性がある。
にも関らず、皆さん「自分が死なない」と思ってるのか、「死んだら後はどうとでもなれ」って思っているのかは定かではないのですが、何の相続対策もしていない。
ですので、この問題をなんとかしたいなぁと思ってました。
自分が死ぬとは中々考えないですもんね。
前もって対策しないからケンカになったりするんですね。
私は、こういった相続対策、要するに揉めないように、いかに対策するかということをやりたいなと思うようになり、相続対策を終活から考えてみましょうという活動の一環として、“終活”弁護士という名称を作りました。
そういった活動のなかで、【デジタル終活】という言葉に出会いました。
すぐに、これは、今後絶対必要になってくるなと直感しましたので、デジタル終活に関わる事をやりたいなと思って、その協会を立ち上げて活動し始めたというところですね。
ビビッと来た訳ですね。
揉めなくて済むようにというところが出発点だったんですか。
ステキな発想です。

最近、スマホの情報が色々と漏れてしまってトラブルに繋がるというニュースが本当に多くなってきた気がするんです。
メッセージとか、写真とか、便利ですけどトラブルの元にもなりますよね?
そういう意味では、思い出を残しても、禍根は残さないようにしましょうねっていう。
自分が見られたくないものは、ちゃんと隠しましょう。
みなさん、すぐにアダルトコンテンツをイメージされてしまうのですが・・・それに限らず見られては困る写真やデータがあるんでしたら、それは絶対隠さないといけないですし、あとは、家族に見せてない自分の面があったりとか、家族に言えない趣味のようなもの。そういったものについてちゃんと対応しましょう、と伝えてます。
価値観は様々ですが、
自分の親族にそういう趣味があると知ったら、抵抗ある人にとっては相当ショックじゃないですか。
仮にパソコンとかデジタルが無い時代を想像していただきたいのですが、
当時は、デジタルデータの代わりに何かしらの<モノ>があるので、見られては困るものを集めまくるといった行為は、やりにくい筈なんですよ。
要は証拠が残っちゃうから。
家の中にモノがあれば、留守中に荒らされたらもう分かっちゃう訳ですよ。
パソコンだったら、パスワードがわからない限りは中に入れないので、ある意味、秘密の花園が簡単に手に入るというか、容易に自分の世界を構築できてしまう。
なので、自分の趣味が思いっきり反映される傾向にあるんですよね。アダルトコンテンツしかり。
アダルトコンテンツに限らず、もしも大量のデータを持っていた場合、
それが現物の写真やビデオテープだったりしたら、それこそ部屋が…
部屋が無茶苦茶で大変なことになりますよね。
床が抜けちゃうかも。(笑)
それが、データという形態をとっているだけで、コンテンツをゲットした人間全員がそういうことができちゃう環境にあるんですよね。
あー、そういう時代に私達は生きてるんですねー。(しみじみ)
確かに、デジタル終活の重要性が私にもわかってきました。
■ところでデジタル終活ってどうやればいいの?
デジタル終活はやった方がいいですよという事は分かりました。
伊勢田さんも、もちろん勧めたりする訳じゃないですか?
その時に、見られたくないデータ?とかをどう処理するとか、あったりするんですか?
そうですね。
「残さなきゃいけないものがあります」ですとか、「こっちが重要です」という事をお伝えしてますね。
ビジネス関係の資料などですね。

例えば、個人事業主である社長さんやその奥さん。
特に個人事業主の奥さんはまさに必要かと思うんですけども、基本はパソコンを用いて仕事しているので、
大事な情報が全部中に入っている筈なんです。
芸人さんだったら、それこそネタ帳しかり、仕事上の大事なデータが全部入っているという事になります。
例えば個人事業主の方でネットで何か売買されている方は、ネットに全部データが入っているので、万が一ご主人亡くなったとしても取引は続いている訳なんです。
奥さんがそれを引き継いで対応しなければならないという時に、パソコンのパスワードが分からないから中入れませんといった事がある訳です。
あとはネット証券とか、引き継げる情報をきちんとと遺しましょうねという話です。
あ〜。そう考えると
残さないといけない情報ってあるものなんですねー。
そうですね。
デジタル終活ってどうやってやるの?というお話ですので、こういった形で一応3ステップ踏みましょう、と説明しています。
【棚卸】は、要は
どんなものがあるのか確認していきましょうねということ。
次に棚卸したものを
【分類】していきましょう。それを
<残す>ものと
<隠す>ものに分類していきましょう。
残すものと隠すものを、
レベルごとにわけていきましょう。
<絶対に遺す><出来れば、遺す><絶対に隠す><出来れば、隠す>とした上で、それらを
【エンディングノート】に記載していきましょう。
という流れでご案内しています。
これがデジタル終活のやり方ですね。
この通りにやれば、私でもできそうです!
その中で、棚卸ってなかなか難しいんですね。
というのは、現代のパソコンってかなり容量が多いので、一個一個チェックするってのは、なかなか厳しい。
ですから、分類しながら棚卸ししましょうというところでですね、こういった棚卸しシートを使います。
隠したいものと残したものをレベルごとに分類して、各領域のデータについて対応を検討しましょうね、という形でご案内していますね。人それぞれで、隠したいもののレベルは変わってくるので、注意が必要ですね。

その人の価値観で変わってくるという事ですね。
これはわかりやすいです。
こういったお話をして、それから
実際にどう隠すかっていうところですけど、
対応方法について考えてみましょうという事で、このような形でご案内しています。

この表出すとですね、
必ず突っ込まれるのが、「
残したいものをエンディングノートに遺すのはわかります」よと。
「隠したいものをエンディングノートに遺すというのはどういうことですか?」と言われるんです。
あ、確かに。
隠したいものですよね?
そんな事書いても良いんですか?
例えば「『マイドキュメントの中にある【シークレット】ってフォルダは絶対見ないでください!』って書くんですか?」って言われるんですけど…
100パー見られます。
絶対見ますので、そうじゃないんです。
「必要なデータを取り出したら HDDごと破壊して処分してくださいね」という風に伝えます。
要は「必要なデータはココなんです」と。「それを取り出したら後は捨ててくださいね」という意思表示をしましょうね、という事です。
そういう風に書いてくださいねとお伝えするんですね。
そうすると、さらに反論が来るんです。
「いや、そんなこと書いてたら余計怪しまれる!」と。「絶対見られる!」と言われるんですけど…
いろいろ反論されますね〜(笑)
そしたら何て言うんですか?
それに対して、「このデジタル終活って一朝一夕にできるものではなくて、そういうことを書いてもしっかりとそれに対応してくれるだけの人間関係を築かないとダメですよ」と伝えてます。
普段遊び歩いてて、こういうとこ見られたくないからって書いておいて 、その通りにやってくれるかっていったら、「人間関係ができてないからそれはできませんよ」と。
ちゃんとした人間関係ですね。
そのデジタル終活をやってくれるであろう、奥様旦那様、お子さんかもしれないですけど、その人間関係を築いた上でのデジタル終活ですよ、だから「ちゃんとした人間関係築きましょうね」というところを言うと、だいたいぐうの音も出ないです。
そう言われたら何も言えないですね。
さすが弁護士。(笑)
人間関係か〜
たしかに、居ますよね〜。
人間関係築く前に色々押し付けてくる人って〜(チラッチラッ)
思わず自分の人間関係を省みてしまう、深いお話になりました。
みなさん、良い人間関係は構築できていますか?
いよいよ次回は最終回です!